たか    いいか、お前は首に「市蔵」と書いた札をぶら下げ
         私は市蔵と申します、と、みんなの所をお辞儀してまわるんだ。

よだか   そんなことはできません。

たか    いいや、できる。そうしろ。もしあさっての朝までにそうしなかったら
         つかみ殺してやるからな。

よだか   それはあんまり無理じゃないですか。
         そんなことをするくらいなら死んだほうがましです。
         今すぐ殺してください。

たか    あさってまでだぞ忘れるな。・・・市蔵・・・なかなかいい名じゃないか。

        (たか去る。鳥たちも笑いながら去る)

よだか   いったいぼくは、なぜこうまでみんなに嫌がられるんだろう。
         ぼくは今まで悪いことをしたことがないのに・・・

        (夜の表現 よだかゆっくり飛ぶ口に何か入る。飲み込む。衝撃音)

よだか   いつもと同じだ。口に飛び込んだカブトムシを飲み込んだだけだ。
         なのに何で胸が苦しいんだろう

         (よだか飛びつづける。また飲み込む。衝撃音)

よだか   ああ〜〜〜。カブトムシやたくさんの羽虫が毎晩ぼくに殺される。
         そしてただ一つのぼくが今度はたかに殺される。
         ああ、つらいつらい。ぼくはもう虫を食べないで飢えて死のう。
      いや、その前にたかがぼくを殺すだろう。
         いや、その前に、ぼくは遠くの遠くの空の向こうに行ってしまおう。

         (よだか、かわせみの所へ飛んでいく)
よだか   かわせみ、かわせみ、ぼくの弟よ。

かわせみ  あ、にいさん、こんばんは。何か急の用事ですか?

よだか   いいや、ぼくは今度遠い所へ行くんだ。そのまえにちょっとお前に会いにきたよ。

かわせみ  にいさん、行っちゃいけませんよ。はちすずめだって遠くにいるしぼくは
      独りぼっちになっちゃうじゃありませんか。


よだか   それはどうもしかたないんだ。
         おまえもね、どうしても必要な時の他は、いたずらに魚をとったり
      しないでおくれ。ね。さよなら。


かわせみ  にいさん、どうしたんです。待ってください、にいさん!

      (よだか飛びつづける)

よだか   お日さんの所まで行こう。 
         (よだか飛びつづける。苦しい表情。汗を拭くしぐさ)

よだか   お日さん、お日さん!どうぞぼくをあなたの所へ連れて行ってください。

         焼けて死んでもかまいません。 

お日さん  おまえはよだかだな。なるほど、ずいぶんつらかろう。
         今夜、星にそう頼んでみるがいい。お前は夜の鳥なのだから。

      (よだか、うなずくとくるくる回って落ちていく。うずくまる。
       しばらくして気づく)


よだか   もう夜だ、行かなくちゃ。 

     (飛んでいく)

よだか   オリオンのお星さん、西の青白いお星さん!
      
どうかぼくをあなたの所へ連れて行ってください。焼けて死んでもかまいません